ラズパイbookworm対応 – キャベツを輪切りで四分割する方法、mathematicaで学び直す本当に使える数学

年の瀬も押し迫った2023年末。ふと冷蔵庫を開けると、キャベツがまるごとひとつ転がっていました。

冷蔵庫に転がっていたまるごと一個のキャベツ
冷蔵庫に転がっていたまるごと一個のキャベツ

買ってからもう結構な時間が経っています。腐らせては勿体なので、お好み焼きでも作ろうと思い、キャベツを四分の一切り出そうしたとき、ふっと思い出しました。

キャベツの四等分って結構難しくないですか?

いや簡単だろという人は、こちらの切り方を思い描いているはず。

十字に切るとキャベツの四分割は簡単だが…

これじゃだめです。断面積でかいし(キャベツは断面から痛みが進む)。私はこう切りたいのです。

キャベツを輪切りで四分割したい。

断面積の問題以外にも、同じ体積なら輪切りにしたほうが冷蔵庫の中でかさばりにくいという理由もあります。しかし、

輪切りだと、どの位置で切れば
四分の一になるのか分からない。

過去にも適当な目分量で輪切りして、キャベツの千切りを作ったことがあるのですが、

やたら多量の千切りができたり
とても少ない千切りになったり
輪切りの加減はすごく難しい

のですね。そこで2023年最後の企画として、

球体を四分の一に輪切りする位置を
正確に計算してみよう

と決意しました。

球体の体積を計算しよう

知りたいのは、キャベツを四分の一に輪切りするための「おおよその位置」ですから、問題を簡略化して、

キャベツは半径1の完全な球体であるものとする(近似する)

ことにします。球体の体積を求めるため、球のどまんなかの断面に対してx-y座標を置きます。

球を横から見た図。球をx=0からx=aの位置まで輪切りにした部分の体積をVaと表す。

球を真ん中で分割しているので、断面は半径1の円になります。x=0からx=aまでの球の輪切りの体積をVa とおくと

輪切りの体積Vaは簡単な積分で求まる。

試しにa=1(半球)にした場合、体積V1 =2 Pi/3で、球の体積の公式にr=1を当てはめた値 4 Pi/3の半分となりますから、どうやらこの積分は正しそうだということが分かりますね。

四分の一になる位置x=aを求めるためには、x=0からx=aまでの体積Vaが、半球の体積V1 の半分になれば良いわけですから、次のような等式が成り立ちます。

輪切りの位置aはこの方程式を満たす。

最後の式を満たすaが分かれば、キャベツのどこを切れば四分の一に分割出来るのかが分かります。

mathematicaで3次方程式を解く

さて、これまでの計算をまとめましょう。四分割に輪切りする位置aは次の方程式を解けば分かります(ただし0<a<1)。

これまでのまとめ。赤い部分の体積が全体の1/4になるようなaが知りたい。

3次方程式なので中学校で勉強した解の公式では解けませんね。じゃあ高校生ならどうかといえば、入試問題のように簡単に因数分解できたりはしないので、やはり手で解くのは難しいでしょう。

そもそも解としてルートが入り組んだ数式が欲しいわけではなく、解aの値を十進数の数字で欲しいわけです。そういうケースではニュートン法というコンピューター上の数値計算テクニックを使えばよいのですが、それを手動で一からプログラムするのは面倒です。

そんなときこそmathematicaです!

ようやくmathematicaの登場です(ここまで読んでくれたみなさんありがとう!)。 購入するとなると結構な値段のmathematicaも、ラズパイにはただでついてきますので、これを活用します。

家庭・趣味向けのMathematicaの価格:個人ライセンスオプション
仕事ではなく趣味でお使いになるMathematicaの価格.デスクトップ,オンライン,クラウドのオプションがあります.ニーズに最適のライセンスをお選びください.

いまだに個人ライセンスで2万円以上するmathematica。ラズパイなら無料で利用できます。

mathematicaのインストール

インストールは簡単…なのですが、mathematicaは結構な量のストレージを消費することだけには注意してください。

sudo apt update
sudo apt install wolfram-engine

/opt/Wolframに3G超えのファイルがインストールされます。インストールが終了するまで辛抱強く待ちましょう。

mathematicaの使い方

インストールが終了すると、メインメニューに”Mathematica”が追加されます。

ラズパイのmathematicaはメインメニューに追加されている。。
ラズパイのmathematicaはメインメニューに追加されている。

メニューからmathematicaを起動すると

ラズパイで起動中のmathematica。
ラズパイで起動中のmathematica。

しばらく待つ(結構長い)と、ノートブックが表示されてプロンプト表示されますから、さっそく今回解きたい問題を入力していきましょう。方程式のイコールが==であることに注意してください。

ラズパイのmathematicaで3次方程式を解く。問題を入力する。イコールの部分が == であることに注意。
ラズパイのmathematicaで3次方程式を解く。問題を入力する。イコールの部分が == であることに注意。

入力したら shift + リターン で実行です。

ラズパイのmathematicaで3次方程式を解く。shift+returnで計算実行。答えが表示された。
ラズパイのmathematicaで3次方程式を解く。shift+returnで計算実行。答えが表示された。

答えが出ましたね! 今の問題的に意味があるのは 0 < a < 1の範囲のaですから

a=0.347…

であることが分かります。この値は0.333…=1/3 とほぼ同じですから、つまり

キャベツを体積でおおよそ4等分に輪切りするには
半径を3等分した位置で切ればいい。

すなわち

半径を3等分した位置で輪切りにすると、だいたい4分の一の体積のキャベツが切り出せる。

ということになります。こうしてみると意外と覚えやすいですね!

実際にキャベツを切ってみました。

全体の四分の一の量を輪切りで切り出したキャベツ。半径を3等分する位置で切れば、ほぼ体積が1/4になるはず。
全体の四分の一の量を輪切りで切り出したキャベツ。半径を3等分する位置で切れば、ほぼ体積が1/4になる、はず。

多すぎも少なすぎもしない、絶妙な量のキャベツが手に入りました。

ちなみにキャベツを輪切りで3等分したい場合を計算するとa=0.226となりますので、半径を四等分した位置a=0.25に割と近くなります。体積で4等分にするには半径を3等分した位置で切ればよく、体積を3等分にするには半径を4等分した位置で切ればよい、と覚えておけば、まあまあ正確な量で切り出せるのではないでしょうか。

ラズパイなら無料で使えるmathematicaで、あなたの数学力をレベルアップ

今回はラズパイについてくるmathematicaについて、ひと通りの使い方を紹介しました。世の中にラズパイを扱ったブログは数多くありますが、mathematicaの存在はだいたい無視されてますよね。あえてこのmathematicaをテーマに選んだ私を褒めてあげたいです(笑)。

mathematicaが身の回りにある生活

今回のキャベツについては、ブログ用の企画ではなく、本当にキャベツが余っていたのがきっかけです。キャベツの千切りをしたことがあれば分かってもらえると思うのですが、キャベツを輪切りで分けようとする度、その量がまちまちになるのに本当に困っていました。今日こそは決着をつけてやろうと思い、転がっていた紙の切れ端で計算をはじめて、どうやら手では解けない三次方程式になることが分かりました。ここはmathematicaだよなと思って、居間のテレビにくっついてたラズパイにコマンドをパチパチ入力しまして、トータル10分ほどで答えを出すことができました。

mathematicaの恩恵: 数学に取り組むしきい値が下がる

ここで大切だったのは24時間動かし続けているラズパイがそばに置いてあり、mathematicaにすぐアクセスできる環境が常日頃から準備されていたことです。mathematicaのように方程式を勝手に解いてくれるシステムがそこにあるから、ちょっと何かを計算してみようとも思えるのです。しかし、そういう手助けがなくて、計算してもすぐ数値で答えが得られかどうか分からない環境では、計算しても仕方がないよな、という方向に向かってしまいます。

要するに数学に取り組むまでのしきい値の問題でしょうか。mathematicaのようなシステムが身の回りにあるかないかで、日々の生活の数学レベルがだいぶ変わってくるのではないでしょうか。

これからを生き抜くエンジニアに必要な数学レベルとは

AI理論の古典ともいえる誤差逆伝搬法は、今日の高度に発展した深層学習の中でも未だに活用され続ける計算技術のようで、そしてこの誤差逆伝搬法の仕組みは、本当に単純な偏微分の数値計算手続きです。難しい、のではなくとても簡単であることにこの手法のすごさがあるのですが、「微積分がよく分からない」という状況では「なんかすごい黒魔術があるようだ」という理解しかできないでしょう。

pythonを書くとか、javascriptを書くとかいうレベルでプログラマに必要な能力は、数学力よりもむしろ語学力(英語のドキュメントがスラスラ読めるとか、英語でコミュニケーションが取れるとか)じゃないかと私は思っています。しかし、AIの仕組みを理解したいとかいう場合は話が別で、微積分は必須です。また、AIの前に流行っていたビックデータの話をしようとすれば、確率・統計の理解は不可欠でしょう。

発展著しいAIは、単純なプログラムのコーディング作業を代行しつつあります。これから先を考えるのであれば、AIに出来ない仕事はなんだろうかと考えるべきで、AIに対抗していくなら結局数学の力で差別化していくしかないかもしれません。これから数学を身につけたいのなら、無料で手に入るmathematicaが魅力的に映りませんか?

ラズパイで立ち上げたmathematica。グラフもちゃんと書けます。計算のツールと言うより、グラフや数式を眺めながら思考するためのツールです。
ラズパイで立ち上げたmathematica。グラフもちゃんと書けます。計算のツールと言うより、グラフや数式を眺めながら思考するためのツールです。

キャベツを撮影するのにも最適なファイル共有サービス – SoqAlbum(無料)を使ってブログを書く

思い付きでキャベツを四分割する位置を計算した当初は、この話をブログにするつもりはありませんでした。ただ、いよいよキャベツを輪切りにしようとした瞬間に、ふと思い浮かんだのです。

今日はキャベツブログ書いてみるか(笑)

そこで利用したのが、本サイトで展開中のファイル転送サービスSoqAlbumです。SoqAlbumを使えば、スマホ(iPhone, android)をラズパイやPCに簡単に連携できます。例えば、

SoqAlbumならスマホで撮影した写真を
直接ラズパイ or PCに保存できる

今回はラズパイでSoqAlbumを立ち上げ、スマホで撮影したキャベツの写真を、撮影と同時にラズパイに直接転送、テレビの大画面でリアルタイムに写真の仕上がりを確認しながら、切る前のキャベツと、切った後のキャベツの写真を多量に収集しました。

今回のブログでは図や数式を多用しましたが、これも手書きのメモをスマホで撮影して、SoqAlbumでラズパイに取り込んでいます。

ブログ作成の素材収集に利用したSoqAlbum。ラズパイで立ち上げたSoqAlbumにスマホをリンク。キャベツやお好み焼きの写真が、スマホでの撮影と同時に自動的にラズパイに取り込まれる。
ブログ作成の素材収集に利用したSoqAlbum。ラズパイで立ち上げたSoqAlbumにスマホをリンク。キャベツやお好み焼きの写真が、スマホでの撮影と同時に自動的にラズパイに取り込まれる。

通常であれば、スマホで写真を撮影した後に、保存された写真を選択して、メールやクラウド経由でPCに転送する必要があるでしょう。しかし、

SoqAlbumなら
「写真の撮影」+「PCへの転送」+「画面での確認」までが
スマホのワンクリックで終わる

ので、とても簡単にブログで使う写真素材を集めることができたのです。

SoqAlbumの概要とQRコードを使ったスマホのリンク方法について、以前のポストをどうぞ。

QRコードが使えないPCと連携したい場合は、こちらのやり方が便利。

SoqAlbumはMicrosoft Storeの公式アプリです。Windowsの方はMicrosoft Storeにアクセスしてアプリをゲットできます。

SoqAlbum - Microsoft Store の公式アプリ
QRコードをスマホ(iPhone, Android)でスキャンするだけで、スマホとPCの間のファイル共有が実現します。面倒なアカウント作成や、スマホへのアプリのインストールは必要ありません。またスマホの種類に悩む必要もありません。QRコード...

撮影に使用したキャベツはスタッフが美味しくいただきました

mathematicaで作ったお好み焼き?豚肉とともに余り物の竹輪も投入してみました(笑)
mathematicaで作ったお好み焼き?豚肉とともに余り物の竹輪も投入してみました(笑)

なかなか大きめのキャベツで、四分の一のキャベツで4枚のお好み焼きが焼けました。ビールが進みますね(笑)

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